日本核酸医薬学会第1回年会優秀発表者賞(川原賞)

11日30日-12月2日に京都で第1回核酸医薬学会が開催されました。本学会は新しく発足した学会で、薬学、化学、工学、医学からの大学研究者や多くの国内外の企業の研究者が参加し、欧米のOligonucleotide Therapeutics Society(OTS)のpresidentのDr. Brett Monia, 日本のAMED(日本医療研究開発機構)の理事長の末松誠先生の特別講演もあって、大変盛況でした。

記念すべきこの第1回年会で、吉岡耕太郎先生が“ヘテロキメラ2本鎖核酸医薬による新規マイクロRNA抑制機構の解明”の演題で、下浦貴大くん(修士2年生)は“DNA/RNAヘテロ核酸を用いた生体内での血液脳関門の機能制御”の演題で公募からの数少ない口演に選ばれて、さらに若手研究者を対象とした「日本核酸医薬学会第1回年会優秀発表者賞(川原賞)」を受賞されました(http://www.knt.co.jp/ec/2015/natsj1/award.html)。

吉岡先生はmiRNAを制御できる新規の分子構造の基盤技術の創生(第2世代ヘテロ核酸)とその分子生物学的機序の解明を、下浦くんは、ヘテロ核酸による血液脳関門の遺伝子制御の可能とする基盤技術の発表しました。

下浦くんの研究内容は桑原先生の指導の功績も大きく、同門会一同、吉岡先生と下浦くん/桑原先生の栄誉を称え、 その受賞をお祝いしたいと思います。

横田隆徳

座薬として投与可能な核酸医薬の開発

我々は大阪大谷大学薬学部薬剤学講座の村上正裕教授らと共同で、世界初の核酸医薬の経口化を可能とする新規送達技術の開発に成功し、Scientific Reports (サイエンティフィック・リポーツ)に、2015年11月23日午前10時(英国時間)にオンライン版で発表され、医科歯科大学からプレスリリースされました。
http://www.tmd.ac.jp/archive-tmdu/kouhou/20151124.pdf

この研究成果は、現在注射薬しか開発されていない核酸医薬について、lipid nanoparticleを用いてsiRNAを座薬としての剤型開発とマウスでの有効性確認に成功したもので、腸溶剤などによって核酸医薬の経口の内服薬の開発にも道を拓くものです。今後により安全で簡便な投与を実現する核酸医薬品の医療応用が期待されます。
また、我々の開発したヘテロ核酸も腸管投与に成功しつつあり、この先の医科歯科での核酸医薬の経口薬創薬につながるものです。 この研究は事業仕分けにあい、大変苦労したプロジェクトで完成は6年の歳月を要し、First authorの仁科一隆先生や、大きな貢献をした吉田規恵さんの功績をたたえるとともに、同門で喜びたいと思います。

横田