生体内で血液脳関門の機能を制御するバイオテクノロジーを開発

同門会員各位

嬉しい報告があります。我々の脳神経病態学分野と東京大学大学院薬学系研究科分子薬物動態学教室が共同で推進してきた「生体内で血液脳関門の機能を制御するバイオテクノロジーを開発」の論文がScientific Reportsに3月12日に掲載され(http://www.nature.com/articles/s41598-018-22577-2)、同日に論文のプレスリリースを本学(http://www.tmd.ac.jp/archive-tmdu/kouhou/20180313_1.pdf)と日本医療研究開発機構(AMED)(https://www.amed.go.jp/news/release_20180312.html)で行いました。

血液脳関門は様々な脳疾患で治療標的となる場所であり、生体内においてその機能を分子レベルで制御するバイオテクノロジーは医療や創薬の発展に必要ですが、実際に活用されているものは存在しません。我々の研究室では、アンチセンス核酸よりもはるかに高い効果を示し、既存のアンチセンス核酸の作用を汎用的かつ大幅に向上できるヘテロ核酸を開発していますが、本研究では、このヘテロ核酸をマウスの静脈内に投与することにより、血液脳関門の機能を分子レベルで制御することを実現したものです。

本研究は、約4年の歳月をかけて桑原宏哉先生と大学院博士課程(留学生)の宋金東君、大学院修士課程の下浦貴大君を中心に取り組んできたテーマです。血液脳関門の機能評価の実験では、東京大学大学院薬学系研究科の楠原洋之教授のグループにサポートしていただきました。ヘテロ核酸の論文としては、その概念や意義をNature Communicationsに発表して以来の2番目のもので、桑原先生、宋君、下浦君の多大な努力と栄誉を称えたいと思います(写真は下浦君が日本核酸医薬学会第1回年会で優秀発表者賞(川原賞)を受賞したときのもの)。

本研究はAMEDの革新的バイオ医薬品創出基盤技術開発事業などの支援のもとで行われたものです。ほとんどの核酸医薬は全身投与では大部分が肝臓に集積しますが、ヘテロ核酸は肝臓以外の臓器・組織、特に神経筋でも有望な結果が出ており、我々は同事業をはじめとした多くの公的なグラントや製薬会社からの支援を受けて、神経筋疾患の治療を目指したヘテロ核酸のさらなる開発に尽力しています。、ヘテロ核酸が臨床現場で使用されるまでさらに邁進していきたいと思っています。

横田隆徳