東京医科歯科大学 神経内科同門会員各位
我々の脳神経病態学分野と大阪大学大学院薬学研究科と徳島文理大学薬学部が共同で推進してきた「血液脳関門(blood-brain barrier、BBB)を通過してアンチセンス核酸を中枢神経系に送達する新技術の開発」の論文が、ドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System、DDS)の研究領域の中で最もインパクトファクターの高い雑誌であるJournal of Controlled Release(インパクトファクターは7.9です)に2018年5月12日に掲載され(https://doi.org/10.1016/j.jconrel.2018.05.010)、6月19日に論文のプレスリリースを本学で行いました(http://www.tmd.ac.jp/archive-tmdu/kouhou/20180619_2.pdf)。
血液脳関門では、脳微小血管内皮細胞同士をつなぐ密着結合(tight junction、TJ)が大きな障壁となっています。二細胞間の密着結合(bicellular tight junction、bTJ)を制御しても、アンチセンス核酸などの高分子医薬は血液脳関門を通過できないと考えられています。本研究では、最近になってその存在が知られ始めた三つの細胞の角が接する部位の密着結合(tricellualr tight junction、tTJ)を、アンギュビンディン1という蛋白質断片により制御するという新戦略を取り入れました。その結果、静脈注射したアンチセンス核酸が中枢神経系に効率的に送達され、標的RNAの発現が抑制されました。
この研究発表で、銭谷先生は7月29日の第18回遺伝子・デリバリー研究会でベストプレゼンテーション賞を受賞し、9月30日からシアトルで行われるThe 14th Annual Meeting of the Oligonucleotide Therapeutics Societyに向けてTravel Grantを受賞しました。また、䑓藏君は、同じくこの研究発表で、本学脳統合機能研究センター(CBIR)の第9回若手インスパイアシンポジウムで優秀賞口頭発表部門第1位を受賞しました。
我々は血液脳関門通過性ヘテロ核酸と血液脳関門通過型ミセルという2つの基盤技術を開発し、それぞれベンチャー企業を設立して、神経疾患への臨床応用の研究を推進してきました。今回開発した技術は3つ目の血液脳関門通過技術になります。ここに桑原先生、銭谷先生、臺蔵君の多大な努力と栄誉を称えたいと思います(写真は、銭谷先生が第18回遺伝子・デリバリー研究会でベストプレゼンテーション賞を受賞したときのものと、䑓藏君がCBIR第9回若手インスパイアシンポジウムで優秀賞口頭発表部門第1位を受賞したときのもの)。
横田隆徳