うれしいお知らせ

2016年からAMEDで行ってきた大型研究事業である 脳科学研究戦略推進プログラム事業 (融合脳) 「血液脳関門通過型抗アミロイドβオリゴマー抗体の創生によるアルツハイマー病の分子イメージング診断、治療法の開発及び発症メカニズムの解明」の研究成果が論文化されました。

天野晶子先生、三條伸夫先生が中心に川崎市産業振興財団ナノ医療イノベーションセンター 片岡一則教授、東京大学 中木戸誠講師や安楽泰孝特任准教授、大分大学 松原悦朗教授など多くの先生方と協力し、5年以上の歳月をかけて取り組んできたテーマです。

断片化抗体と、医科歯科大、東大で独自に開発した血液脳関門を効率的に通過するナノミセルの分子構造を利用して、断片化抗体の脳へのデリバリーを達成する技術の開発に成功しました。

これにより、アミロイドβ(Aβ)オリゴマーに対する断片化抗体とナノミセルを発展させた「抗体内包ナノマシン」をアルツハイマー病モデルマウスへ投与すると、神経毒性の強い複数のアミロイド種を除去し、脳の病理学的変化や認知機能の低下を抑制することを明らかにしました。さらに、抗体内包ナノマシンは、断片化抗体のマウスの血液脳関門通過量が、抗体単体投与の約80倍多いことも示しました。この研究結果はJournal of Nanobiotechnology (IF=9.429)に掲載され、東京医科歯科大学から1月31日にプレスリリースされ (https://www.tmd.ac.jp/press-release/20230131-1/)、NHK NEWS、朝日新聞、読売新聞、日経産業新聞、日経バイオテクで報道されました。

アルツハイマー病の初期に脳内に十分な抗体を供給するシステムと疾患修飾効果の実現、単独で種々の神経毒性アミロイド種を除去することができる抗体、抗体の断片化によりアミロイド関連画像異常の予防の可能性があることなど、これまでの抗体療法よりも安全で、効率的な治療法の開発への発展が期待されます。

横田隆徳